マルプーのパテラ|予防法と手術・治療費用を徹底解説
ふわふわの毛とつぶらな瞳で、毎日私たちに最高の癒しをくれるマルプー。もはや家族の一員であり、何にも代えがたい大切な存在ですよね。しかし、その華奢で愛らしい体には、小型犬ならではの病気のリスクが潜んでいることをご存知でしょうか。
「最近、うちの子が後ろ足を上げてスキップみたいに歩くことがある…」
「ソファから飛び降りた瞬間、『キャン!』と鳴いて足を痛そうにした…」
もし、こんな仕草に心当たりがあるなら、それは「パテラ(膝蓋骨脱臼)」のサインかもしれません。パテラは、マルプーの親犬種であるマルチーズやトイプードルから遺伝的に受け継ぎやすく、非常に多くのマルプーが抱える可能性のある関節のトラブルです。
この記事では、獣医師監修のもと、多くのマルプーの飼い主さんが抱えるパテラの不安をゼロにするため、具体的な症状の見分け方から、今日からご家庭で始められる予防策、そして誰もが気になる手術や治療の費用、ペット保険の賢い使い方まで、どこよりも分かりやすく丁寧に解説します。
「うちの子は大丈夫かな?」「もしパテラになったら、いくらかかるんだろう…」そんなあなたの心配や疑問に、この記事が必ずお答えします。大切な愛犬が一日でも長く、痛みなく元気に走り回れる未来のために、ぜひ最後までじっくりお読みください。
【そもそも】マルプーのパテラ(膝蓋骨脱臼)とは?
パテラってどんな病気?膝のお皿がズレるトラブル
「パテラ」は、正式には「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」と呼ばれる病気です。なんだか漢字が並ぶと難しく感じますが、仕組みはとてもシンプル。ワンちゃんの後ろ足の膝にある「お皿の骨(膝蓋骨)」が、本来収まっているべき溝から内外にズレて(脱臼して)しまう状態を指します。
この膝のお皿は、膝の曲げ伸ばしをスムーズにするサスペンションのような大切な役割を担っています。ここがズレてしまうと、痛みを感じたり、違和感から足をかばうような歩き方をしたりするようになるのです。特に、マルプーのような小型犬に非常に多く見られることで知られています。
なぜ?マルプーがパテラになりやすい2つの理由
「どうしてマルプーが特になりやすいの?」と疑問に思いますよね。それには、避けられない「生まれつきの理由」と、日々の暮らしに潜む「環境の理由」の2つが大きく関係しています。
1. 遺伝的・先天的な要因
マルプーの親であるマルチーズやトイプードルは、犬種としてパテラを発症しやすい傾向があります。その体質を受け継ぎ、生まれつき膝のお皿がはまる溝(滑車溝)が浅かったり、足の骨の形が少し変形していたりする子が多いのです。これは、いわば「そういう骨格の子が多い」ということなので、飼い主さんの努力だけでは防ぎきれない側面もあります。
2. 後天的な要因(生活環境)
先天的な要因があったとしても、症状を出させない、悪化させないためのカギは日々の生活環境にあります。
- 滑りやすい床:ツルツルのフローリングは、犬にとっては氷の上を歩くようなもの。足が滑って踏ん張りがきかず、膝に不自然な力がかかり脱臼の引き金になります。
- 段差からのジャンプ:ソファやベッドからの飛び降りは、着地の際に体重の何倍もの衝撃が小さな膝にかかります。これを繰り返すことが、パテラ発症の大きな原因です。
- 肥満:体重オーバーは、四六時中重りを足につけているのと同じ。関節への負担が常に増大し、パテラを悪化させる最大の要因と言っても過言ではありません。
たとえ遺伝的な素因があったとしても、生活環境を整えることで、発症を予防したり、症状の進行を緩やかにしたりすることは十分に可能なのです。
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【危険度チェック】これってパテラ?見逃せない7つのサイン
パテラは重症度によって4つのグレードに分類されます。グレードが低いうちに対処することが、愛犬の足を守る上で非常に重要です。以下のサインが見られたら、自己判断せず動物病院で相談しましょう。
グレード1〜2のサイン【初期症状を見逃さないで】
- □ 歩いている時に、急に後ろ足を数歩浮かせてケンケン歩き(スキップ)をする
- □ しばらくすると、何事もなかったかのように普通に歩き出す
- □ ソファなどから飛び降りた後、「キャン!」と鳴いて片足を気にする
- □ 座るときに、片方の後ろ足を不自然に伸ばして座ることがある
この段階では、日常生活に大きな支障はなく、痛みも常にあるわけではないため、飼い主さんが気づきにくいことも多いです。しかし、「たまにスキップする」のは異常のサイン。見逃さないことが大切です。
グレード3〜4のサイン【要注意!進行した症状】
- □ スキップやケンケン歩きが日常的に見られる
- □ 膝が常に脱臼しているため、腰をかがめて内股で歩くようになる
- □ 足を引きずったり、触られるのを嫌がったりする
グレード3以上になると、骨の変形が始まり、常に痛みを伴うようになります。手で戻してもすぐに外れてしまったり、完全に戻らなくなったりするのがこの段階です。ここまで進行する前に、必ず獣医師の診察を受けましょう。
【今日から実践!】愛犬をパテラから守る5つの習慣
パテラの予防と悪化防止は、特別なことではありません。日々の暮らしの中のちょっとした工夫で、愛犬の膝を守ることができます。診断されている子も、まだ症状がない子も、ぜひ今日から取り入れてみてください。
1. 体重管理:肥満は膝への静かな爆弾
まず最も大切なのが体重管理です。愛犬の体を優しく触ってみて、あばら骨がうっすらと感じられますか?上から見たときに、ウエストにくびれはありますか?もしなければ、少しぽっちゃり気味かもしれません。フードの量を1割減らしたり、おやつを低カロリーなものに変えたりして、ベストな体重を維持しましょう。
2. 住環境の見直し:滑る床は今すぐ対策を!
次に効果的なのが、床の滑り止め対策です。特にマルプーがよく過ごすリビングや廊下には、滑り止め効果の高いマットやカーペットを敷いてあげましょう。
我が家でも様々な商品を試しましたが、汚れた部分だけを剥がして洗える「ジョイントマット」が一番使いやすかったです。また、ソファや階段にはペット用のスロープやステップを設置し、ジャンプさせない習慣づけを。子犬の頃から慣れさせておくのが理想的です。
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3. 運動:筋肉は最高の天然サポーター
膝の周りの筋肉を鍛えることで、関節が安定し脱臼しにくくなります。ただし、ボール投げやフリスビーなど、急な方向転換やジャンプを伴う激しい運動は逆効果。膝への負担が少ない、ゆっくりとしたペースでの散歩が最もおすすめです。アスファルトよりも、芝生や土の上などクッション性のある地面を選んで歩くと、さらに膝に優しくなります。
4. 食事とサプリ:内側から関節をケアする
関節の健康維持をサポートする成分を、食事やサプリメントで補うのも有効な手段です。「グルコサミン」や「コンドロイチン」、「緑イ貝」といった成分は、軟骨を保護したり、炎症を抑えたりする働きが期待できます。
フードにかけるだけの粉末タイプや、おやつ感覚で与えられるチュアブルタイプなど、様々な商品があります。愛犬が喜んで続けてくれるものを選んであげましょう。ただし、あくまで栄養補助として、かかりつけの獣医師に相談してから始めるのが安心です。
5. 足裏ケア:意外な滑りの原因を断つ
見落としがちですが、足裏のケアも非常に重要です。爪が伸びすぎていると、しっかり地面を掴めず不自然な歩き方になります。また、肉球の間の毛が伸びて肉球を覆ってしまうと、本来の滑り止めの役割を果たせません。定期的な爪切りと足裏の毛のカットで、愛犬が大地をしっかり踏みしめられるようにサポートしてあげましょう。
もしパテラと診断されたら?治療法の種類とリアルな費用
どんなに予防を頑張っていても、パテラを発症してしまうことはあります。でも、落ち込まないでください。適切な治療で、症状をコントロールし、健やかな生活を取り戻すことは可能です。
保存療法:手術をしない選択肢(グレード1〜2)
症状が比較的軽い場合に選択されるのが保存療法です。上記の予防策(体重管理、環境整備、運動制限)を徹底しながら、消炎鎮痛剤で痛みをコントロールしたり、関節サプリを活用したりします。これはパテラを根本から治すものではなく、これ以上悪化させずに症状とうまく付き合っていくことを目指す治療法です。
外科手術:根本的に治すための選択肢(グレード2後半〜4)
保存療法で改善が見られない場合や、グレード3以上で歩行に明らかな支障が出ている場合は、外科手術が検討されます。脱臼の原因となっている骨の溝を深くしたり、骨の向きを矯正したりすることで、お皿が外れないようにする根本的な治療法です。手術の成功率は非常に高く、多くのワンちゃんが痛みから解放され、再び元気に歩けるようになります。
【一番知りたい】パテラの手術費用はいくら?
飼い主さんにとって、最大の心配事が費用面だと思います。パテラの手術費用は、病院の設備や地域、症状の重さ、手術方法によって大きく異なりますが、一般的に片足あたり20万円~40万円程度が相場と言われています。これには、術前検査、麻酔、入院費、術後の薬代などが含まれます。両足を手術する場合は、費用も倍近くになる可能性があります。
高額な治療費に備える「ペット保険」というお守り
「急に30万円なんて払えない…」そう思うのが当然です。そんな「万が一」の事態に備えて、大きな助けとなるのがペット保険です。手術費用のような高額な治療費も、プランによっては50%〜70%を補償してくれます。経済的な負担が軽くなることは、精神的な安心感にも繋がります。
マルプーのようなパテラになりやすい犬種を迎えたら、病気になる前の、若くて健康なうちに加入を検討することを強くおすすめします。保険料や補償内容も様々なので、一度比較サイトなどでシミュレーションしてみると良いでしょう。
まとめ:正しい知識と愛情でマルプーの足を守ろう
今回は、マルプーの飼い主さんなら誰もが知っておきたい「パテラ」について、症状から予防、治療費用まで詳しく解説しました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 「たまにするスキップ」は病気のサイン:歩き方の変化に気づいたら、すぐに動物病院へ相談。
- 予防の基本は「体重」と「床」:肥満を防ぎ、滑らない・ジャンプさせない環境作りが最も重要。
- 便利グッズを賢く活用:滑り止めマットやステップ、関節サプリは未来への有効な投資。
- 「万が一」に備える:高額な手術費用に慌てないためにも、ペット保険は心強い味方になる。
パテラはマルプーにとって、とても身近で、他人事ではない病気です。しかし、正しい知識を持って早期に対策すれば、決して怖すぎる病気ではありません。この記事を読んだあなたの行動が、愛するマルプーの未来の歩みを守る第一歩になります。いつまでも健やかな毎日を送れるよう、一緒に頑張っていきましょう。
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