マルプーのパテラ解説!原因から予防・治療法まで
「最近、愛犬のマルプーが歩くときに足を気にする…」「スキップみたいな歩き方をするけど、これってもしかしてパテラ?」
このように、愛らしい家族であるマルプーの些細な変化に、心を痛めている飼い主様は少なくありません。膝蓋骨脱臼、通称「パテラ」は、特にマルプーのような小型犬にとって非常に身近な病気です。しかし、この病気について漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、マルプーのパテラについて、その原因から具体的な予防策、さらには最新の治療法までを徹底的に解説します。この記事を最後まで読めば、パテラに対する正しい知識が身につき、愛犬の健康を守るために今日から何をすべきかが明確になるはずです。大切な愛犬と一日でも長く健やかな毎日を過ごすために、ぜひご一読ください。
そもそも、犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)とは?
まず初めに、パテラがどのような病気なのかを正しく理解することが、全ての対策の第一歩となります。ここでは、パテラの基本的な仕組みから、なぜマルプーが特になりやすいのかまで、分かりやすく紐解いていきましょう。
パテラの基本的な症状と仕組み
膝蓋骨脱臼(パテラ)とは、その名の通り、膝のお皿の骨(膝蓋骨)が正常な位置からずれてしまう疾患です。本来、膝蓋骨は太ももの骨(大腿骨)にある溝にすっぽりと収まっており、膝の曲げ伸ばしをスムーズにする滑車のような重要な役割を担っています。ところが、何らかの原因でこのお皿が内側や外側に外れてしまうのがパテラです。
その結果、犬は膝に違和感や痛みを感じるようになります。そして、以下のような特徴的な症状が見られることがあります。
- 歩いている途中で、急に後ろ足を一本浮かせる(ケンケンする)
- スキップするような独特の歩き方をする
- 走っている最中に突然キャンと鳴いて座り込む
- 足を触られるのを嫌がる
これらの症状は、脱臼した膝蓋骨が自然に戻ることで一時的に治まることもありますが、根本的な解決には至りません。したがって、放置すれば症状は悪化する可能性が高いのです。
なぜ、マルプーはパテラになりやすいのか?
パテラは全ての犬種で起こり得ますが、特にトイ・プードルやマルチーズ、チワワといった小型犬に非常に多く見られます。そして、その両親から生まれたマルプーも、残念ながら例外ではありません。
その理由は、主に遺伝的な要因にあります。小型犬は生まれつき骨格が華奢であり、膝蓋骨が収まる大腿骨の溝が浅い傾向にあります。つまり、元々お皿が外れやすい骨格構造を持っている子が多いのです。さらに、マルプーは体重が2〜4kgと非常に軽量で、関節も極めて繊細です。そのため、ちょっとした衝撃でも膝に大きな負担がかかってしまうという特徴があります。
見過ごしは危険!パテラがもたらす健康リスク
「たまに足を浮かせるだけだから大丈夫」と軽く考えてしまうのは非常に危険です。パテラは進行性の病気であり、放置することで様々な健康リスクを引き起こします。
例えば、脱臼を繰り返すうちに膝の軟骨がすり減り、関節に炎症が起きて慢性的な痛みを引き起こします。さらに重症化すると、関節が変形し、歩行困難に陥ることもあります。そればかりか、痛い足をかばって歩くことで、他の足や腰にも過剰な負担がかかり、二次的なケガや椎間板ヘルニアなどを誘発するリスクも高まるのです。
症状の重さを示す「グレード分類」
パテラは、症状の重さによって4つのグレードに分類されます。このグレードは、治療方針を決定する上で非常に重要な指標となります。
- グレード1:膝蓋骨は正常な位置にあるが、手で押すと脱臼する。しかし、離せば自然に元の位置に戻る。無症状の場合が多い。
- グレード2:時々、自然に脱臼する。脱臼したままになることもあるが、足を曲げ伸ばししたり、犬自身が足を動かしたりすることで元に戻る。時々スキップのような歩き方をする。
- グレード3:膝蓋骨は常に脱臼している状態。手で戻すことはできるが、離すとすぐにまた脱臼してしまう。腰をかがめて歩くなど、明らかな歩行異常が見られる。
- グレード4:常に脱臼しており、手で押しても元の位置に戻すことができない。骨の変形が著しく、正常な歩行が困難になる。
あなたの愛犬がどの段階にあるのかを正確に知るためにも、少しでも気になる様子があれば、まずは動物病院で診察を受けることが何よりも大切です。
なぜ起こる?膝蓋骨脱臼の2つの原因
パテラの原因は、大きく分けて「先天性」と「後天性」の2つに分類されます。愛犬がどちらの要因で発症したかを理解することは、今後の対策を考える上で非常に役立ちます。
ほとんどがコレ!「先天性」の要因
実は、犬のパテラのほとんどは先天的な要因、つまり生まれつきの骨格の異常が原因であると言われています。前述の通り、マルプーのような小型犬は、遺伝的に大腿骨の溝が浅かったり、膝周りの靭帯に異常があったりするケースが多いのです。
この場合、子犬の頃は無症状でも、成長と共に骨格が形成される過程で症状が現れ始めることが少なくありません。あるいは、元気いっぱいに走り回っているように見えても、実は膝に爆弾を抱えている状態なのです。だからこそ、日々の生活でのケアが極めて重要になります。
日常生活に潜む!「後天性」の原因
一方、後天性のパテラは、交通事故や高所からの落下といった強い衝撃によるケガが原因で発症します。しかし、それだけではありません。日々の生活習慣や環境が、じわじわと膝への負担を蓄積させ、パテラを引き起こすこともあるのです。
- 生活環境:滑りやすいフローリングの床は、犬が踏ん張る際に足腰へ大きな負担をかけます。これが脱臼の引き金になることは非常に多いです。
- 過度な運動:急なダッシュやストップ、激しいジャンプを繰り返す遊びは、繊細な膝関節を痛める原因となります。
- 肥満:体重が増えれば、その分だけ関節への負担は増大します。特に小型犬であるマルプーにとって、肥満はパテラを悪化させる最大の敵と言っても過言ではありません。
つまり、たとえ先天的な素因があったとしても、後天的な要因をいかに取り除くかが、発症や悪化を防ぐ鍵となるのです。
今日からできる!パテラの予防と対策法
「うちの子をパテラにさせたくない」「症状をこれ以上悪化させたくない」と願うのは、全ての飼い主様の共通の想いでしょう。ここでは、日常生活の中で実践できる具体的な予防・対策法を5つご紹介します。
1.住環境を見直す【滑り対策は必須】
最も重要かつ即効性があるのが、床の滑り対策です。フローリングのご家庭では、犬がよく通る場所にカーペットやコルクマット、滑り止めのワックスなどを活用しましょう。これにより、犬が踏ん張っても足が滑らず、膝への負担を劇的に軽減できます。
さらに、ソファやベッドへの飛び乗り・飛び降りを防ぐために、ペット用のスロープやステップを設置するのも非常に効果的です。
2.体重管理を徹底する【肥満はNG】
愛犬の体を触ってみて、あばら骨が簡単に触れますか?もし脂肪で分かりにくいようであれば、少し太り気味かもしれません。肥満は関節への負担を直接的に増加させます。したがって、適切な食事管理と適度な運動によって、常に理想的な体型を維持することを心がけてください。
食事は、関節の健康をサポートするグルコサミンやコンドロイチンといった成分が配合されたフードを選ぶのも良い選択です。
3.運動の方法を工夫する【激しい運動は避ける】
筋肉は、関節を安定させる天然のサポーターです。そのため、適度な運動で筋力を維持することは大切です。ただし、その方法には注意が必要です。
急なダッシュやジャンプ、硬いアスファルトの上での長時間の運動は避けましょう。代わりに、ゆっくりとしたペースでの散歩や、芝生のような柔らかい地面での軽い運動がおすすめです。これにより、関節に負担をかけずに、必要な筋肉を鍛えることができます。
4.正しい抱っこの仕方をマスターする
意外と見落とされがちなのが、抱っこの仕方です。脇に手を入れて前足だけで持ち上げるような抱き方は、犬の体に負担をかけます。抱っこする際は、必ずお尻をしっかりと支え、犬の体が地面と水平になるように安定させてあげましょう。
5.定期的な健康チェックを欠かさない
パテラは早期発見・早期対策が何よりも重要です。症状が出ていなくても、定期的に動物病院で健康診断を受け、膝の状態をチェックしてもらう習慣をつけましょう。そして、日頃から愛犬の歩き方をよく観察し、少しでも異変を感じたらすぐに獣医師に相談することが、重症化を防ぐための最も確実な方法です。
もしパテラと診断されたら?治療の選択肢
万が一、愛犬がパテラと診断された場合、どのような治療法があるのでしょうか。ここでは、診断から治療、そしてその後のケアまでの流れを解説します。
診断から治療方針の決定まで
動物病院では、まず獣医師が触診(手で触って膝の状態を確認すること)や歩行の様子を観察します。そして、必要に応じてレントゲン撮影を行い、骨の状態を詳しく確認した上で、パテラのグレードを診断します。この診断結果に基づいて、今後の治療方針が決定されます。
軽度の場合(グレード1〜2):保存療法
グレードが比較的軽い場合は、手術をせずに症状の進行を抑える「保存療法」が選択されることが一般的です。これは、これまでご紹介してきたような、体重管理、運動制限、生活環境の改善などが中心となります。
それに加えて、痛みを和らげるための消炎鎮痛剤の投与や、関節の健康を維持するためのサプリメントなどが処方されることもあります。あくまで進行を食い止めるための治療であり、根本的に治すものではありませんが、この段階で適切なケアを行えば、生涯手術をせずに済むケースも少なくありません。
重度の場合(グレード3〜4):外科手術
一方、グレード3以上で歩行に明らかな支障が出ている場合や、保存療法では改善が見られない場合には、外科手術が推奨されます。手術の方法はいくつかありますが、主には大腿骨の溝を深くしたり、靭帯を調整したりすることで、膝蓋骨が外れないように物理的に矯正します。
もちろん、手術には麻酔のリスクや費用(一般的に片足20万円〜40万円程度が相場)が伴います。しかし、成功すれば愛犬を痛みから解放し、再び元気に歩けるようにしてあげられる可能性が高い治療法です。ペット保険に加入している場合は適用されることが多いですが、加入前に発症している場合は対象外となるため、事前に契約内容を確認しておくことが重要です。
治療後のリハビリとアフターケアの重要性
手術はゴールではありません。むしろ、手術後のリハビリと生涯にわたるアフターケアこそが、治療の成否を分けると言っても過言ではありません。
手術後は獣医師の指示に従い、運動制限を徹底し、徐々にリハビリを進めていく必要があります。そして、たとえ症状が改善しても、滑りにくい床の維持や体重管理といった日常のケアは、生涯にわたって継続することが再発防止のために不可欠です。
まとめ:正しい知識と愛情で愛犬の足を守ろう
今回は、マルプーの飼い主様が知っておくべき膝蓋骨脱臼(パテラ)について、詳しく解説しました。
パテラは、マルプーにとって避けては通れない病気の一つかもしれません。しかし、その一方で、飼い主様の正しい知識と日々のちょっとした工夫で、発症や悪化のリスクを大きく減らすことができる病気でもあります。
最も大切なのは、愛犬の小さなサインを見逃さず、異変を感じたらすぐに専門家である獣医師に相談することです。そして、滑らない床、適切な体重管理、負担の少ない運動を心がけること。この一つひとつの愛情のこもったケアが、愛犬の健やかな未来へと繋がっていきます。
この記事が、あなたと大切なマルプーとの毎日を、より豊かで幸せなものにするための一助となれば幸いです。
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